人生


出航


無限に続く果てしない海の真ん中から航海が始まる
ヨレヨレのＴシャツ一枚に　穴あきショーツ　そしてサンダル一足
小さなボートにオールが一本
水筒に半分の水とパンの切れ端が一つ
ボートの先の日時計がジリジリと時を刻むのを眺めながら
ポツンと一人航海を始める

目指すは海の果てにあるという幻の島
無人島かもしれない
何も無いかもしれない
でも
何か在るかもしれない

目指してみよう
幻の島
きっと何かあるはずだよ
ここに佇んでいてはいけないね
とにかく行こう
行こう　行こう

さぁ　出航

周りを見渡せば
海　海　海

見上げれば雲一つない
空　空　空

お天道様はいつもニッコリ
暑い　暑い　暑い
たまには一休みしてくださいな

風はたまにビューッンって吹いて邪魔しに来るけど
いつもは緩やかに頬を撫でて心を休めてくれる

魚は唯一の友達
食べてはいけないよ　我慢　我慢
少ないけれどもパンがあるじゃないか

波は高くザザーッと上がり
ザブーンと圧しかかる

何度も何度も
何度も何度も

ザザーッ
ザブーン

ザザーッ
ザブーン

何度も何度も圧しかかる

その度に流され
ボートはひっくり返り
オールを急いで追いかける

何度も何度もひっくり返る
何度も何度も追いかける

何度も溺れて
何度も死に物狂いで起き上がる

慌てない　慌てない
でも　死んじゃったら元も子も無いからね
ボートをしっかりと漕ぐんだよ

さてと　幻の島ってどこに在るんだっけ？
そうそう　海の果て
海の果てにはどうやったら行けるんだろう？
地図は無い
頼りになるのは日時計だけ？

いいや　魚達がいるよね
魚達は海に生まれて海に還って行くんだよ
海の事は何でも知ってる
仲良くしてるから　何でも教えてくれる

小さな魚は嵐の時の隠れ家や　便利な小道を知ってるよ
大きな魚は長旅のコツを教えてくれたり　お天道様の言葉を教えてくれる
人魚もいるんだよ　人魚は海の唄を詠いながら応援してくれる　
みんなとても優しいね

お返しに　幻の島を見つけたらみんなを招待してあげるって約束したんだ

でもね　誰も幻の島の事　知らないんだって
誰に聞いても分からない　聞いたこともないんだって

ホントの事言うとさ
幻の島なんて無いんだよ
だって　僕の空想の島だもの

でもね
幻の島はあるんだよ
だって　僕が作る島だもの

幻の島にはね
何でもあるんだよ
だって　僕が何でも作るもの

幻の島は　僕の島
僕の島はもう　今　作り始められたんだよ
だって　今　航海を始めたんだもの
楽しみ　楽しみ
幻の島

オールを大きくひと漕ぎ
オールを大きくふた漕ぎ

少しずつだけど　幻の島は出来てるよ
少しずつだけど　幻の島は僕の島になってるよ

魚さん　魚さん　待っててね